八重の桜 第12回 蛤御門の戦い
伏見、嵯峨、天王山に終結した長州勢は会津、薩摩によって京を追われた雪辱を果たそうとしていた。
会津本陣では『長州、討つべし!』と田中土佐(佐藤B作)の号令で会津藩士が動き出した。一番隊は伏見街道、二番隊は御所の警固に向かったが山本覚馬(西島秀俊)は釈然としない。そのころ長州勢は『一気に御所に攻め入る!』と久坂玄瑞(須賀貴匡)は叫んでいた。
会津では『うまぐいげば一挙両得とよかんべが・・』と権八(松重豊)がつぶやていた。囲炉裏端で、うら(長谷川京子)が手紙が届いてから権八がぶつぶつと言っていると八重(綾瀬はるか)に話す。京から届いた覚馬からの手紙に八重に尚之助(長谷川博己)と夫婦になれと書いてあったのだ。『にし、尚之助殿と夫婦になれ!これは覚馬の考えだ。』八重の婿になれば、尚之助は仕官でき新式銃が採用される日も近くなる考えだった。権八の『きめだ!この縁談、進めんべ。いいな』に『私は・・・・。嫌でごぜいやす。・・・嫌でごぜいやす。』と八重は否定する。
囲炉裏端で、うらは縁談は悪い話ではないと言うが、『もう7年になる。ずっと、兄様だと思って暮らしてきた。・・・・・今さらだんな様だなんて・・』と戸惑う八重だった。角場で八重がぼんやり鉄砲を持って立っているのを見て危ないと焦る尚之助。『私、あの話は・・』の八重に『私も、お断りするつもりでした。』と言う尚之助だった。
元治元(1864)年7月18日深夜。長州勢が三群から進行を開始した。御所前の馬上で一ツ橋慶喜が指揮をする。御所に向かった会津二番隊は蛤門の前で配置についた。覚馬と林権助(風間杜夫)が鉄砲隊を率いている。
一方、神保内蔵助(津嘉山正種)が率いる一番隊は同日未明に伏見街道にさしかかった。ところが長州勢は大垣藩に攻めくずされ伏見の藩邸に引き揚げた後だった。同行していた新撰組の土方歳三は『くそっ!大垣藩に、まんまと手柄を横取りされたな。』と呟く。長州兵の残骸をみた山川大蔵(玉山鉄二)は、八幡宮での真木と久坂の言葉を思い出した。『ご家老!もしや、伏見の軍勢はおとりでは?』と大蔵が語った。
早朝、長州勢は精鋭は地響きを立てて御所に押し寄せた。馬上には来島又絵兵衛が指揮をしている。『長州藩・来島又絵兵衛、まかり通る!』と長州兵が鉄砲で攻撃をしてきた。会津も林、覚馬の指揮のもと槍隊、鉄砲隊で応戦する。覚馬は銃で来島の腹を撃ち抜き、指揮官を失った長州は後退していく。
御所の中で大砲の響に公家たちがが怯えていた。抗戦を訴える松平容保に『禁裏に発砲する賊徒 退けて御所を守護せよ!』と孝明天皇は命令する。
別の門が長州勢に破られたと知らせを受け大砲を御所内に入れ蛤御門を死守するする会津藩。次々と会津の鉄砲隊が倒れていく。苦戦の中、突然、一発の大砲が長州勢に撃ちこまれた。
『薩摩藩士・西郷吉之助、ご加勢つかまつる!』
『あん時の・・・・』と笑顔を見せて銃弾をよける覚馬。西郷隆盛(吉川晃司)率いる薩摩兵のエンフィールド銃はつぎつぎと長州兵を射撃した。
『新式銃だ!薩摩は、強え・・』と新式銃の凄さに目を奪われていた覚馬は、横で大砲の爆風に吹き飛ばされ倒れる。その瞬間に覚馬の視界が消え、額から血が流れ目に入っていた。
天王山から攻め寄せた久坂、真木らの一隊は堀町御門横にある鷹司邸に立てこもっていた。『今は無理じゃ。一旦、引け。』と言う桂小五郎の忠告を聞こうとしない久坂。慶喜率いる桑名・彦根の兵たが長州勢を攻めあぐねいているところに覚馬が御所の青銅砲を引かせて合流した。砲弾が堀を壊し、会津、桑名、彦根の兵たちが鷹司邸に突入した。炎の中、『僕が死んでも後に続くものたちがいる!時の流れは止められんぞ!』と叫ぶ久坂は自刃をした。
鷹司邸から火の手があがり、炎は強風にあおわれ市中に燃え広がった。炎を見つめながら『久坂、僕は君と違う方法で道を開く。』と号泣する桂だった。
天王山では残党を調べる大蔵と新撰組。目の前で自刃する真木。
会津では長州の敗走など知らされたが覚馬の安否は、まだ分からなかった。心配のあまり、うらはをみねの手を強く握りしめてしまう。『長州が敗走したそうです。屋敷を大砲で土砕いて・・・・覚馬さんは、きっとご無事です。』と尚之助が皆を励ました。『そうだなし・・・。兄様だ。兄様が、大砲、撃ぢごんだんだ。』と八重も話す。
その夜、角場では『さっきはありがともし。まことは・・私もうろためていました。・・・兄様、ごぶじだべか・・』と八重の涙を流すのをぬぐろうとする尚之助。
覚馬と広沢は、焦土と化した京の町をみて回った。逃げ遅れて死んだ京の人々の前で手を合わせていた。
『これが、戦が・・・。何百年もかがって築いた町を、たった一日で焼き尽ぐしちまった』焼け野原に逃げてきた人たちが炊き出し長い行列を作っている。
覚馬たちが会津藩と知り『鬼め!』『会津は鬼や。早う都から去ね。』『都を焼いた鬼や!』と声が投げられた。家を焼かれ、親兄弟をなくした子供たちが『お母ちゃんを返せ!』小石まじりの土を投げてきた。『会津のお方に、ご無礼したらいかん。』それを、止めたの会津藩御用総元締の大垣屋清八(松方弘樹)だった。
覚馬に『戦するのはお武家さん商売、お武家さんから御用承るのは、わいらの商売や。そやけど何の罪とがもない子どもらが、むごい目に遭うのを見るとつくづく因果な商売や思います。・・山本様、西洋の学問をしても家焼かずに済む、戦のやりようは分からんもんでっしゃろか?』疑問を投げかける清八。
これが覚馬と清八のはじめての出会いだった。
第12回 おもなキャスト
山本八重 :綾瀬はるか
山本覚馬(八重の兄) :西島秀俊
川崎尚之助(洋学者) :長谷川博己
山川大蔵(会津藩士) :玉山鉄二
久坂玄瑞(長州藩士) :須賀貴匡
西郷隆盛(薩摩藩士) :吉川晃司
大垣屋清八(会津藩御用総元締):松方弘樹